流動化・証券化協議会 - SFJ -

流動化・証券化について

 流動化・証券化には、様々なスキームが存在しますが、以下では、流動化・証券化の代表的なスキームとして、「ABS(Asset-Backed Securities=資産担保証券)」、「RMBS(Residential Mortgage Backed Securities=住宅ローン担保証券)」、「CMBS(Commercial Mortgage Backed Securities=商業用不動産担保証券)」をご紹介します。

◆ABS(Asset-Backed Securities=資産担保証券)

 ABS(Asset-Backed Securities)とは、オリジネーターと呼ばれる原保有者 が保有する特定の資産を、SPV (Special Purpose Vehicle 。 特定目的会社(TMK)、合同会社(GK)等の特別目的会社(SPC)、信託等) に譲渡することによって企業から分離させ、その資産から生じるキャッシュフローを裏付けとして発行する有価証券であり、最も一般的な証券化商品です。

 我が国の最近のABSとしては、消費者ローン債権等の貸金債権、オートローン債権等の割賦債権といった金銭債権を対象資産としたABSが多く、SPVとしては信託を用いる案件が多くなっています。通常は、信託銀行等の信託受託者が、対象資産である金銭債権の信託譲渡の引換えに、優先・劣後関係にある優先受益権及び劣後受益権をオリジネーターに交付し、オリジネーターが優先受益権を投資家に売却し、その売却代金によりオリジネーターが資金調達をします。

 信託を用いたABSの基本スキームの例は以下の通りです。

◆ABS(Asset-Backed Securities=資産担保証券)

  1. @オリジネーターは、保有する原債権から証券化の対象となる債権を抽出して、信託銀行(受託者)に信託 譲渡します。
  2. A信託銀行は、信託譲渡された債権と引換えに、信託受益権(優先受益権及び劣後受益権)をオリジネーターに交付します 。
  3. Bオリジネーターは、Aで取得した信託受益権のうち、優先受益権を投資家に売却します。多くの案件では、オリジネーターから投資家に対して直接優先受益権を売却するのではなく、アレンジャー(証券会社等)が、優先受益権の売却の媒介を行うか、一旦アレンジャーが買い取って、優先受益権を投資家に対して販売するという方法で、売却されます 。
  4. C投資家は、優先受益権の売買代金をオリジネーターに支払います。
  5. Dサービサー(当初はオリジネーターが兼務するケースがほとんどです)は、信託受託者として証券化対象たる金銭債権の新保有者となった信託銀行から対象債権の回収業務の委託を受け、原債務者からの返済金を回収して、信託受託者である信託銀行 に引き渡します。
  6. E 信託受託者は、受領した回収金から公租公課やスキームを維持するのに必要な費用を支払った上で、回収金のうち利息に相当する部分を信託配当として、元本に相当する部分を信託元本の償還として、優先受益者である投資家に交付します 。

◆RMBS(Residential Mortgage Backed Securities=住宅ローン担保証券)

 RMBS(Residential Mortgage Backed Securities)とは、資産担保証券(ABS)の一種で、住宅ローン債権から構成されるポートフォリオを裏付資産として発行される有価証券のことであり、わが国の証券化市場においても大きな取扱いを占めている商品です。
 民間金融機関によるRMBSの基本スキームの例は以下の通りです(最近では、独立行政法人住宅金融支援機構が、一定の場合の流動性補完や信用補完を提供する機構保証型のRMBSの発行も増えてきているところですが、仕組みが多少複雑になることから、以下ではRMBSの基本スキームについて説明します。)。

◆RMBS(Residential Mortgage Backed Securities=住宅ローン担保証券)

  1. @住宅ローン債権を保有するオリジネーター(金融機関)を委託者とし、信託銀行を信託受託者とする住宅ローン債権信託契約を締結し、 オリジネーターは信託受託者に住宅ローン債権を信託譲渡します。
  2. A信託受託者は、信託譲渡された住宅ローン債権と引換えに、信託受益権(優先受益権及び 劣後受益権)を委託者に交付 します。
  3. B委託者は、取得した信託受益権のうち、 優先受益権を投資家に売却します。ABSの場合と同様、多くの案件では、委託者から投資家に対して直接優先受益権を売却するのではなく、アレンジャー(証券会社等)が、優先受益権の売却の媒介を行うか、一旦アレンジャーが買い取って、優先受益権を投資家に対して販売するという方法で、売却されます。
  4. C投資家は、委託者に信託受益権の買取代金を支払います。
  5. Dサービサー(当初はオリジネーターである金融機関が兼務するケースがほとんどですが、一部、住宅ローンの実行段階から証券化することを予定し、証券化後の債権回収はオリジネーター以外の事業者が債権回収を行う仕組みが採用されている案件もあります。)は、信託受託者として証券化対象たる住宅ローン債権の新保有者となった信託銀行から対象債権の回収業務の委託を受け、原債務者からの返済金を回収して、信託受託者に引き渡します。
  6. E信託受託者は、受領した回収金から公租公課やスキームを維持するのに必要な費用を支払った上で、回収金のうち利息に相当する部分を信託配当として、元本に相当する部分を信託元本の償還として、優先受益者である投資家に交付します。

◆CMBS(Commercial Mortgage Backed Securities =商業用不動産担保証券)

 CMBS(Commercial Mortgage Backed Securities)とは、資産担保証券(ABS)の一種で、賃貸マンション、ホテル、オフィスビル、ショッピング・モール、スーパーマーケットなどの商業用不動産に対して実施された貸付債権等をひとまとめにして、これらを 引当資産として発行される証券のことです。

 CMBSの基本スキームの例は以下の通りです。

◆CMBS(Commercial Mortgage Backed Securities =商業用不動産担保証券)

  1. @対象不動産を保有する者を委託者とし、信託銀行を信託受託者とする不動産管理処分信託契約が締結されます。
  2. A不動産信託受託者は委託者に対し、不動産の信託譲渡と引換えに、不動産信託受益権を交付します。
  3. B委託者は、取得した不動産信託受益権をSPC(特別目的会社。合同会社(GK)又は特定目的会社(TMK)であることが多いです。)に譲渡します。SPCは、委託者に対し、受益権の譲渡代金を支払います。
  4. CSPCは、取得した不動産信託受益権を裏付けとして、レンダー(多くの場合、CMBSの組成者となります。証券会社等のアレンジャーであることが多いです。)から責任財産限定特約付ローン(不動産信託受益権に質権等の担保権が設定されるのが通例です。)を借り入れ(GKの場合)、あるいは、レンダーを引受人として特定社債を発行します(TMKの場合)。また、匿名組合出資を受け入れ(GKの場合)、あるいは、優先出資証券を発行することで(TMKの場合)、エクイティ性の資金調達も行います。 エクイティ は、 対象不動産の原保有者が保有することもあれば、原保有者からSPCを介在させて不動産を買い取ることを企図する投資家(スポンサーと称されることが多いです。)が保有することもあり ます。
  5. Dレンダーは、Cで取得したローン債権又は特定社債を、他の同種案件におけるローン債権や特定社債とともに、信託銀行(CMBS信託受託者)に信託譲渡します。
  6. ECMBS信託受託者は、ローン債権又は特定社債の信託譲渡と引換えに、CMBS信託受益権をレンダーに交付します。
  7. Fレンダーは、Eで取得した信託受益権を投資家に販売し、投資家はCMBS信託受益権の譲渡代金をレンダーに支払います。
  8. G不動産信託受託者は、不動産のテナントからの賃料の支払いを受けます。
  9. H不動産信託受託者は、Gの賃料収入により、不動産信託受益権の受益者であるSPCに対し、信託配当を交付します。
  10. ISPCは、Hで受領した金銭から、ローン債権者又は特定社債権者であるCMBS信託受託者に対して、利息を支払います。
  11. JCMBS信託受託者は、Iで受領した金銭から、CMBS信託受益権の受益者である投資家に対し、配当を交付します。
  • *元本償還は、()SPCがリファイナンスで調達した資金により、ローン債権又は特定社債の元本を償還し、ひいてはかかる元本償還金をもってCMBS信託受託者がCMBS信託受益権の元本償還を行う方法、又は()SPCが不動産信託受益権を第三者に売却し、その譲渡代金により、ローン債権又は特定社債の元本を償還し、かかる元本償還金をもってCMBS信託受託者がCMBS信託受益権の元本償還を行う方法により行われる案件が一般的と考えられます。もっとも、対象不動産からの賃料収入により、期中に一部元本償還が行われる案件もあります。

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